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近くて遠い
第8章 助けと契約
─────…
次の日の夜
私は重い足取りでradiceに向かった。
夕夏さんに会うのも、
幸ママに心配してもらうのも、
壊れた傘の入ったロッカーを開けるのも
すべてが嫌だった。
それも私のわがままでしかない。
仕事をやめてしまえば、食べるご飯がなくなる。
三千万という途方もない額の借金や、お母さんの治療費なんという話以前の問題だ。
仕方ない。
それしか言いようがない。
私は重い足を引きずるようにしてお店の中に入った。
暗めの照明に
煙草と香水の香り…
男と女がお金をつがいにして、微笑みあう。
いつもより空気が浮き足だって感じるのは、きっと週末だからだろう。
「桜子、来たのね。」
「すみません、ご心配お掛けして。」
今日も幸ママは妖艶に輝く。
「いいえ。いいのよ。私の配慮が足りなかったの。夕夏はプライドが高いから、あなたに嫌がらせをすることは十分予想できたことだわ。私の責任よ。」
幸ママは、はっきりとそう言い切って、一切私を責める事をしなかった。
「……あの…夕夏さんは…?」
恐れながらも、辺りを見回すがいつもなら一発で見つかるその姿は今日は目に入らない。
「しばらく休ませたわ。謹慎ね。」
「えっ…」
言い淀むことなく当然でしょとばかりの口ぶりの幸ママの言葉に一瞬声を失った。
どんなに強烈でひどい人だとしても、夕夏さんは、この店のNo.1であることに変わりはない。
つまり、間違いなくこの店を成り立たせている主要メンバーの一人なのだ。
そんな存在の夕夏さんに幸ママは謹慎を言い渡した。
何もできないただの新人である私のために…
「夕夏の接客ははっきり言って私も尊敬するくらいすごいわ。あれは天性ね。でも、No.1という座のことがまだよく分かってない。ゲストを取られた取ったで一々心を乱すようじゃまだまだだわ。」
次の日の夜
私は重い足取りでradiceに向かった。
夕夏さんに会うのも、
幸ママに心配してもらうのも、
壊れた傘の入ったロッカーを開けるのも
すべてが嫌だった。
それも私のわがままでしかない。
仕事をやめてしまえば、食べるご飯がなくなる。
三千万という途方もない額の借金や、お母さんの治療費なんという話以前の問題だ。
仕方ない。
それしか言いようがない。
私は重い足を引きずるようにしてお店の中に入った。
暗めの照明に
煙草と香水の香り…
男と女がお金をつがいにして、微笑みあう。
いつもより空気が浮き足だって感じるのは、きっと週末だからだろう。
「桜子、来たのね。」
「すみません、ご心配お掛けして。」
今日も幸ママは妖艶に輝く。
「いいえ。いいのよ。私の配慮が足りなかったの。夕夏はプライドが高いから、あなたに嫌がらせをすることは十分予想できたことだわ。私の責任よ。」
幸ママは、はっきりとそう言い切って、一切私を責める事をしなかった。
「……あの…夕夏さんは…?」
恐れながらも、辺りを見回すがいつもなら一発で見つかるその姿は今日は目に入らない。
「しばらく休ませたわ。謹慎ね。」
「えっ…」
言い淀むことなく当然でしょとばかりの口ぶりの幸ママの言葉に一瞬声を失った。
どんなに強烈でひどい人だとしても、夕夏さんは、この店のNo.1であることに変わりはない。
つまり、間違いなくこの店を成り立たせている主要メンバーの一人なのだ。
そんな存在の夕夏さんに幸ママは謹慎を言い渡した。
何もできないただの新人である私のために…
「夕夏の接客ははっきり言って私も尊敬するくらいすごいわ。あれは天性ね。でも、No.1という座のことがまだよく分かってない。ゲストを取られた取ったで一々心を乱すようじゃまだまだだわ。」