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近くて遠い
第10章 偽りと有川邸
─────…

「どうしたの…?話って。」


次の日の朝。



ベッドからお母さんが身体起こすのを手伝って、学校が休みの隼人もそばに呼んだ。




どうやって伝えればいいのだろう…


昨日有川様が帰ってからそればかりを考えている。



「あのね…」



あと数時間したら有川様の使いがうちに来る。



そんな直前まで私はお母さんに言えないでいる。



「どうしたの…?ゆっくりでいいよ?」



お母さん…



ためらう私の手を優しくお母さんが包み込んだ。



「私ね……好きな人が出来たの…」


懸命に考え出した嘘の言葉をようやく口にすると、お母さんは微かに目を見開いた。


「そう……それで?わざわざそれを伝えようとしてくれたの?」



優しい微笑みが胸にズキズキと突き刺さる。



「それでね……

私、結婚しようと思って……」



「え…?」




驚くお母さんの顔から先ほどの笑顔が消えた。



「お姉ちゃん僕と結婚するんじゃないのー?」


ずっと隣で黙っていた隼人が私の服の裾を掴む。


「そうね…約束してたのに。ごめんね。」


口を尖らせて拗ねる隼人が愛しくて、私は頭を何度も撫でた。



「真希……どういうこと?結婚って…まだあなた17歳なのよ…?」



取り乱したお母さんが真意を探ろうと私を見つめる。


「すぐに結婚するわけじゃないけど…有川さ…ん…って言うのよ。とても親切で私の事大事にしてくれているの。それで、一緒に暮らそうって言ってくれてるの。」




虚言も甚だしい。

結婚…?親切…?


本当は卑怯な金の亡者が私を物のように買うだけの話なのに。






「真希…真希は…その人とうまくやれるって自信があるの?一緒に暮らそうって随分突然すぎない?どうして…ゴホッゴホッ」


「お母さん!」




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