この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
近くて遠い
第10章 偽りと有川邸
はぁ……と溜め息をついてお母さんは天井を見た。
「それでね…
今日からもううちに来るようにって…言ってくれているの。」
「今日?随分突然じゃない。」
眉を潜めるお母さん。
脇では隼人が微かにまた私の服を掴んでいた。
「有川さんは…とてもお金持ちでね。
使いの人がいるものだけ運んでくださるんだって。
それで……
お母さんの治療もするって…そう言って下さったの…」
お母さんは私の言葉に大きく目を見開いて、瞳を揺らした。
「真希!!あなたまさかそれで…」
「違う。
彼を……
有川さんを…愛しているの……。
ほら、また咳が出ちゃうから落ち着いて…」
始めて口にした『愛している』は、嘘の告白だった。
再び興奮しかかったお母さんを制すと、お母さんはまた苦しそうに胸を押さえた。
幼いながらもただならぬ雰囲気を感じ取っているのか、隼人も神妙な面持ちで座っている。
「真希が本当に心からそういうなら、止めないわ……。でも、もし私のためなんて少しでも思っているなら…」
「本気よ。何も心配することはないから。素敵な人と出会ってってお母さん言ったでしょ?」
「………その、有川さんって人に会いたいわ。」
「……っ、もちろん有川さんも挨拶したがってたわ…でも、なんせとても…忙しい人だから。お母さんの容態のこと言ったら大層心配してくださって…
『うちに来てから挨拶を』って…」
うそにうそを重ね
とにかくそれっぽいことをペラペラと並べた。
お母さんは、
突然のことに困惑しながらも、疲れた様子で天井を眺めていた。
「お姉ちゃん、僕も引っ越すの…?」
不安そうに隼人が呟く。
隼人…
私は優しく隼人に微笑んでから、その小さな身体をギュッと抱き締めた。
「当たり前でしょ?お姉ちゃんはずっと隼人のそばにいるから…」
隼人は私の服を掴みながら、何度も頷いていた。
守らなくては
どんなことがあっても、
この二人は、
私が守る…
そう心に決めたとき、
ピンポーンと呼び鈴がなってうちの中に響いた。
「それでね…
今日からもううちに来るようにって…言ってくれているの。」
「今日?随分突然じゃない。」
眉を潜めるお母さん。
脇では隼人が微かにまた私の服を掴んでいた。
「有川さんは…とてもお金持ちでね。
使いの人がいるものだけ運んでくださるんだって。
それで……
お母さんの治療もするって…そう言って下さったの…」
お母さんは私の言葉に大きく目を見開いて、瞳を揺らした。
「真希!!あなたまさかそれで…」
「違う。
彼を……
有川さんを…愛しているの……。
ほら、また咳が出ちゃうから落ち着いて…」
始めて口にした『愛している』は、嘘の告白だった。
再び興奮しかかったお母さんを制すと、お母さんはまた苦しそうに胸を押さえた。
幼いながらもただならぬ雰囲気を感じ取っているのか、隼人も神妙な面持ちで座っている。
「真希が本当に心からそういうなら、止めないわ……。でも、もし私のためなんて少しでも思っているなら…」
「本気よ。何も心配することはないから。素敵な人と出会ってってお母さん言ったでしょ?」
「………その、有川さんって人に会いたいわ。」
「……っ、もちろん有川さんも挨拶したがってたわ…でも、なんせとても…忙しい人だから。お母さんの容態のこと言ったら大層心配してくださって…
『うちに来てから挨拶を』って…」
うそにうそを重ね
とにかくそれっぽいことをペラペラと並べた。
お母さんは、
突然のことに困惑しながらも、疲れた様子で天井を眺めていた。
「お姉ちゃん、僕も引っ越すの…?」
不安そうに隼人が呟く。
隼人…
私は優しく隼人に微笑んでから、その小さな身体をギュッと抱き締めた。
「当たり前でしょ?お姉ちゃんはずっと隼人のそばにいるから…」
隼人は私の服を掴みながら、何度も頷いていた。
守らなくては
どんなことがあっても、
この二人は、
私が守る…
そう心に決めたとき、
ピンポーンと呼び鈴がなってうちの中に響いた。