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不良の彼は 甘くて強引
第12章 浴衣祭り

中に入ると、そこにはいくつか出店が立ち並んでいる。

「わぁ…!」

中学生のころまでは地元の神社で祭りが催され、友人たちとよく参加したものだ。高校生になって離ればなれになるとそんな機会もなくなってしまったが…。



「・・・・」

匠はというとそれこそ祭りに参加した記憶など殆どない。不良仲間たちとの溜まり場にはよく使ってきたが…。


“こんなものが楽しいのか”

匠は辺りを見回す。


互いの浴衣を誉めちぎり合う女同士の集団。

ひとつのリンゴ飴を二人で舐めあう男女。


こんなものが楽しいのか…

匠はもう一度呟く。



「おい」

「はい?」

「何か食べたい物でもあるのか」

「食べたい物…?」


柚子は周りの出店にざっと目を通した。


フライドポテト、唐揚げ、ソフトクリーム、フランクフルト、かき氷……

どれも祭りには定番だが、どうせなら祭りでしか食べないようなものがいい。


「あれがいいです」

柚子の指差す方向

「綿飴、か…」


そんな甘ったるい菓子、匠は食べたことなどない。

だがまぁ、浴衣に綿飴という絵柄は確かによく見る組み合わせだ。


「二百だな」

「え?匠さん、自分のは払いますよ…お財布もありますから」

「貧乏大学生は無理するな」

「……!」


自分も大学生じゃない

そう言いたくなるのを柚子はぐっとこらえた。



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