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不良の彼は 甘くて強引
第13章 けじめの時

曲がり角を過ぎ
大通りに出る。
人混みにまかれ下駄が脱げそうになる。
それでも柚子の足は止まらなかった。
まるで何かに追われているかのように息を切らして走り続けた。
「……ハァ、…っ」
自分に向けられた紗織の瞳が頭をよぎる。
それは柚子の知っている九条紗織という大人の女性のものではなかった。
あれは明らかに
嫉妬に燃えた女の目──
柚子は恐ろしくなった。
だから逃げ出した。
“でも、それだけじゃない”
わたしが逃げ出した理由はそれだけではない…!
紗織に抱きつかれたまま何の抵抗も見せなかった匠
それどころかそのまま紗織の背に添えられた両腕…
“ 抵抗、してほしかった…”
嫉妬したのは
わたしも同じだ…。
柚子の目から落ちる雫が
彼女の紺の浴衣に跡を残していく──

