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不良の彼は 甘くて強引
第15章 実家
「ねぇ、父さん」
最後に一つ
柚子には聞いておきたいことがあった。
「なんだ?」
「父さんが検事を止めて弁護士になったのは…、人を罰するのが辛かったから?」
柚子の父は、東京を離れると同時に検事を止めた。
代わりに弁護士になった彼は、ここから少し離れた場所に法律事務所を作り、そこで働き始めた。
こんな田舎でどれほどの需要があるのかは知らないが…。
「う~ん…」
娘からの真面目な質問に
父はどう答えたものか悩んだ。
「それは違うなぁ」
「…つらくなかったの?」
父は困ったように頭を掻いた。
「例えばこんな言葉がある。
『罪を憎んで人を憎まず』というものだ 」
「人を憎まず…」
「私たちが裁くのは人じゃなくて、そいつが犯した罪」
「…ふーん」
「だから割り切れるんだ」
そういうものかしら…
「ありがと、じゃあ行って来ます!!」
「気をつけなさいね、着いたら連絡しなさいよ!」
「うん」
再び旅立つ愛娘を
騒がしい蝉の声が後押しする。