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不良の彼は 甘くて強引
第16章 海

「俺の女だ、…その辺のよりよっぽどカワイイ…」

「──…ッ」

この人といると
心臓がもたない……!


こんな甘い言葉をかける時に限って、彼の顔はいつもの無表情になるもんだから…!

それが本気か冗談かもわからないのだ。




「それほど気になるのなら海に入ればいいだろう」

「あっ、そっか…」


美しく波紋を象った海岸線。

柚子はゆっくりと歩いていった。


さらさらの砂に足が深く沈みよろけそうになる。

しばらくいくと波が彼女の足首にそっと触れる距離になった。


冷たっ…!!


水分を含んだその砂浜は今度はしっとりと足裏に吸い付いてきた。

小学生ころ家族旅行で来た海
…それ以来の感触。


柚子が屈んで、水ごと砂を一すくいしてみたら

ボロボロとこぼれてしまった。


海水の冷たさに耐えながら胸下までつかった柚子は少し落ち着いてきて、ゆっくり辺りを見渡した。


思っていたよりは人の数が少ないが、周りは幸せそうな親子やカップルで溢れている。


水をかけ合う若い男女

端から見れば何がそれほど楽しいのかわからないものだが、そこには彼等だけの…意味を持った空間と特別な時間が流れている。


とても、素敵なことだと思わない?


柚子は自然と微笑んでいた。




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