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不良の彼は 甘くて強引
第17章 深海の魔物
互いの唇が触れようとするその瞬間
柚子は顔を逸らした。
「キスは嫌いか」
俯く彼女の耳元に匠は囁く。
「──だって、息苦しいもの……」
柚子の脳裏には昼間の海での荒々しいキスが浮かんでいた。
「…ハッ、苦しい?」
匠は柚子の答えを鼻で笑う。
馬鹿にされたと感じた柚子は、頬を膨らませて少しムッとした。
「──だったら…、……お前からすればいい」
「えッ…?」
「お前がやりたいキスをすればいいだろう?」
驚きに目を見開いた柚子が匠の顔を見ると
その表情は明らかに自分を試して楽しんでいる。
「やり方は、わかるな…」
ニヤリと笑った彼は、親指を立てて自らの唇にあてがう。
「……!」
固まった柚子は無言で唾を飲み込んだ。
いきなり自分に差し出された目の前の唇に、何故か目がチカチカする。
匠は柚子の片手に手を添えてさらに顔を近づけ、柚子はただ狼狽していた。
今までのキスは必ず匠に強引にされたものでやり方など考えた覚えもない。
むしろ、激しく求めてくる彼の舌に若干の抵抗を試みていた。
“どうしよう…本当にわからない……”
焦り始めた柚子だが、匠には彼女を逃がす気などなかった。
「下手でも笑わん、…やってみろ」
彼にはわたしを許す気はない
そう直感した柚子はいよいよ心を決める。
「──…」
恐る恐る前に顔を向ける。
ゆっくりと、彼女の唇が匠のそれに押し付けられ
二人同時に目を閉じた。