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不良の彼は 甘くて強引
第17章 深海の魔物


それは冷静に考えれば、なかなかに馬鹿馬鹿しい問いかけだった。


匠と柚子の出会いから
その後の匠のやること為すことを考えてみれば…

怖いに決まっている。



「──…!」


だが、彼女は忘れかけていたのだ

彼がどんな人間かを。


たとえ怖いと言えど、それはその気まぐれさであったり強引さであったり…

そのような程度の怖さだった。

それが今日、あの夕暮れ時の一件で、柚子は匠の狂気の部分を垣間見てしまった。

そして、思い出してしまった。


彼が生きる世界

自分には理解できない

暴力的な世界……。



「あの時の、あなたの目が、怖かった……」

「……」

「すべての感情を消し去ってただ、苦しむ相手を見下ろすあの目が……!!」


柚子は、こちらを真っ直ぐ見つめてくる匠に自分も誠意をこめてかえした。



「なら、今の俺は怖いか?」


「……っ」



今の彼?

…うん、怖い

でもそれはあの時の怖さとは違う意味で。



──夜の海

それに感じる怖さに似ている気がする。





月の光に照らされながら無言で見つめ合う二人。




男の影がじりりと彼女に近づき…その唇を重ねようとした。




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