この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不良の彼は 甘くて強引
第17章 深海の魔物
それは冷静に考えれば、なかなかに馬鹿馬鹿しい問いかけだった。
匠と柚子の出会いから
その後の匠のやること為すことを考えてみれば…
怖いに決まっている。
「──…!」
だが、彼女は忘れかけていたのだ
彼がどんな人間かを。
たとえ怖いと言えど、それはその気まぐれさであったり強引さであったり…
そのような程度の怖さだった。
それが今日、あの夕暮れ時の一件で、柚子は匠の狂気の部分を垣間見てしまった。
そして、思い出してしまった。
彼が生きる世界
自分には理解できない
暴力的な世界……。
「あの時の、あなたの目が、怖かった……」
「……」
「すべての感情を消し去ってただ、苦しむ相手を見下ろすあの目が……!!」
柚子は、こちらを真っ直ぐ見つめてくる匠に自分も誠意をこめてかえした。
「なら、今の俺は怖いか?」
「……っ」
今の彼?
…うん、怖い
でもそれはあの時の怖さとは違う意味で。
──夜の海
それに感じる怖さに似ている気がする。
月の光に照らされながら無言で見つめ合う二人。
男の影がじりりと彼女に近づき…その唇を重ねようとした。