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不良の彼は 甘くて強引
第19章 異変
「…こっちの解き方で応用してみればいいんじゃないか?」
「あっ、そうかも…」
いつものようにベンチに座っていた二人
──翔と柚子は
日が落ちてきたのを合図に校舎の中に戻る。
秋は日が短い。
そして時折吹き抜ける冷たい風は柚子の肩を震えさせ、勉強に適した場所ではなくなってきていた。
二人が格闘していたのは化学の試験問題。
それは彼女の家庭教師先の生徒、今年が大学受験の姉から頼まれた問題だった。
「すみません先輩…、勉強の邪魔をしてしまって」
得意とは言い難い理系科目の質問に四苦八苦していた柚子に、翔は手をさしのべたのだ。
「いや構わないよ…、柚子ちゃんは大変だね、化学も教える科目に入ってるの?」
「いえ、お姉さんの方は英語だけです。でも、少しでも助けになりたいし…」
「そうか……」
問題に目を落としたまま翔は微笑みを浮かべた。
先輩こそ、受験化学なんて勉強し終わって何年も経つのによく覚えてるな…
気になった柚子が聞いてみると、翔は照れ臭そうに答える。
「俺も去年までバイトは家庭教師だったからね、少しだけなら覚えているさ」
そうは言っても、あくまで彼は文系。
もっと自慢してもいいくらいなのに…
実に謙虚だ。