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不良の彼は 甘くて強引
第19章 異変
何度となく、翔は柚子を諦めようとした。
彼女の気持ちが此方に向かない…
それならいくら自分が彼女を想おうとも、一方通行ではナンセンスだ。
なのに何故
柚子は泣いている…
何故、市ノ瀬は彼女を傷つける…!
「…泣かないでくれ」
「先輩…」
突然の翔の告白に、柚子はついていけない…。
「俺が欲しいのは君だけだ…、柚子…!!」
"柚子"と呼び捨てで呼ばれた彼女は、いつもとは違う彼の雰囲気に戸惑う。
翔は柚子を腕の中から解放し、両肩を掴んでその顔を覗きこんだ。
切なげな翔の瞳が真っ直ぐと彼女を見据えて、涙で赤くなった柚子の目は焦点が定まらずキョロキョロ動いている。
「でも俺は…待つよ……、君が求めてくれる日まで。市ノ瀬のように強引に奪ったりはしない…」
なんで先輩が、匠さんとの事をこんなに詳しく知っているんだろう。
疑問に思ってもいい筈だが、今の柚子は頭が混乱してそんなことも考えられなかった。
「……もしかして先輩も、酔ってますか?」
匠さんといい先輩といい…
今日はなんだか変だ。
酔ってる?
その問いかけに、翔の頬が僅かに緩まる。
「ふっ…、酒なんか飲んじゃいないさ…」