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不良の彼は 甘くて強引
第20章 すれ違いは…

「…で、鞄はどうしたの?」

靴下のままの柚子に取り敢えず靴を履くように促して、手ぶらな彼女に翔は優しく問いかけた。


柚子は困り果てた顔を俯せて
何も答えることができずにいる。



市ノ瀬の部屋に忘れたのか

引き返せばいいのだが、そうできない彼女の心中は察することはできる…。


「…俺が代わりに受け取ってこようか」

「あッ、それは…」


たぶん余計に不機嫌になる。

逆効果だ。


柚子は胸の前で小さく手を振った。



「困ったなぁ…」

翔は頭を掻いて溜め息をつく。


「……」

本当に困った…

残された手段は──野宿か。



柚子の顔がみるみるうちに青ざめていく。


当然ながら野宿経験など持っていない。



“いや、公園もあるし…できないことはない気がする”


何故か野宿に前向きになった柚子は、小さな拳にぐっと力を込めた。



「──…それは駄目だよ」


「…えっ!?」




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