この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不良の彼は 甘くて強引
第20章 すれ違いは…
「…で、鞄はどうしたの?」
靴下のままの柚子に取り敢えず靴を履くように促して、手ぶらな彼女に翔は優しく問いかけた。
柚子は困り果てた顔を俯せて
何も答えることができずにいる。
市ノ瀬の部屋に忘れたのか
引き返せばいいのだが、そうできない彼女の心中は察することはできる…。
「…俺が代わりに受け取ってこようか」
「あッ、それは…」
たぶん余計に不機嫌になる。
逆効果だ。
柚子は胸の前で小さく手を振った。
「困ったなぁ…」
翔は頭を掻いて溜め息をつく。
「……」
本当に困った…
残された手段は──野宿か。
柚子の顔がみるみるうちに青ざめていく。
当然ながら野宿経験など持っていない。
“いや、公園もあるし…できないことはない気がする”
何故か野宿に前向きになった柚子は、小さな拳にぐっと力を込めた。
「──…それは駄目だよ」
「…えっ!?」