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不良の彼は 甘くて強引
第20章 すれ違いは…
「……ッ!」
前屈みになった翔は片手をブロック塀につき、後ずさった彼女を壁に追い詰める。
反射的に柚子の手は胸の前で組まれた。
「君に残された選択肢は二つだ…柚子」
「二つ…」
翔は彼女の顔の前で
親指を一本立てる。
「野宿……」
そのまま彼の人差し指が真っ直ぐ立ち、柚子の鼻に向かって突き出された。
「──もしくは…俺の家」
「……!」
自らの鼻に突き出された指に、柚子の目が若干寄り目気味になる。
先輩の家?
それはちょっと…
「野宿と俺の家、どっちの方がまし?」
でも、そういう風に言われたら…。
「…先輩の家」
柚子は赤くなって答える。
翔はにっこりと微笑んで、小さな子供を誉めるように彼女の頭を優しく撫でた。
「よかった…、ここで断られたら俺の方が泣くところだよ……」
鞄はまた明日…、お互いに少し落ち着いてから受け取りに行けばいい。
そう言った翔は壁から手を離して、まだ躊躇している彼女に手を差し伸べた。
「……大丈夫、襲ったりなんかしないから」
柚子の不安も戸惑いも、すべて包み込んでしまうような柔らかな声色──
「……」
彼女の足は自然と彼の横に吸い寄せられていた。