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不良の彼は 甘くて強引
第21章 弱者は弱いか
「先輩、服が……」
「ん?…ああ」
身体を離してみると、自分の涙が翔のカーディガンに大きくしみを作ってしまっているのがわかった。
「…別になんて事ない」
落としてきた荷物を拾いにいく。
「君が俺の胸の中で泣いてくれた証だ」
「…あの……!」
柚子は赤くなって俯く。
少し冷静さを取り戻してみると、先ほどまでの自らの子供っぽい泣き方に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「あの…先輩…」
「──…ところで」
謝ろうとした彼女の言葉に被せて、翔が遮った。
「市ノ瀬は…君にいったい何をもって苛ついているんだ?」
「……!」
匠さんが、わたしに
それは多分──
「…わたしが彼を、拒否したからだと思います」
不謹慎!って…
そう叫んだから……。
「…不自然だな」
翔は先ほどの匠の行動を思い返す。
「君が彼を拒否したのはその時が初めてなの?」
「…?…いいえ」
「…なら何故急にあれほどまで…」
ひとつ理由があるとすれば、俺の存在か…。
だがそれだけであそこまで苛立つほど単純な男には見えないんだが。
きっかけがあるとすれば
市ノ瀬が大学を休んだ一週間だろう。
「…彼が講義を休んでいた時期があったよね……。その理由は知ってる?」
「…理由」
やっぱり……
お父さんが亡くなられたから
…かな。