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不良の彼は 甘くて強引
第25章 温もり
「・・・・」
道端に立ち止まった二人は地図を覗きこむ。
なにせ互いにこの年で初めての場所だ。
どこへ行けばいいのか…
いまいちわからない。
「…パンダ……」
柚子が呟く。
人混みに流れていけばそこにいるのはパンダだ。
「匠さん、パンダ…」
今度は地図上のパンダを指差しながら彼を見上げる。
「普段は人間が多くて見られないと聞いたことがあるが…、今日は平気なようだな」
匠は彼女から地図を奪い取り
もう一度確認する。
「正しい順路もこっちだろう。行くぞ」
はぐれないよう…
彼は柚子の手をとり人の流れに入って行った。
「…見えます?」
「俺は見える。お前はチビだろうが、…もっと前へ行け」
「…わっ」
遠慮がちでなかなか前に行けない柚子を匠が押し込む。
押しのけられた周りの人間は
ムッとした顔で彼を見上げた後で
ある者は少し怯み
またある者は一瞬のうちにその男に見惚れる。
そのうち、二人の周囲に自然と空間ができてくるのだから大したものだ。