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不良の彼は 甘くて強引
第25章 温もり
ガラス越しに見えるその
少々黄ばんだ毛色のパンダを眺める匠。
彼の背後から口々に聞こえる
「可愛い」という歓声。
「…ふっ…」
可愛いものか
丸々とした姿で退屈そうにふんぞり返るその姿…
まるで生命力を感じない。
パンダ商法とはよくぞ言ったもの。
国同士の表面的な " 絆 " のために利用され、物珍しさから一番の人気者にまで押し上げられた。
──哀れなものだ。
匠の口元が皮肉気に笑う。
「──…」
黙ってパンダを見つめていた柚子が
不意に口を開いた。
「わたし…パンダってたれ目だと思ってました」
「ん?」
急に何を言い出す…。
「でも当たり前だけど模様なんですよね、あれ。…目は意外と鋭いですし、さっきからご飯を狙ってぎらついてます」
「…? …どこがだ」
匠の目には、ただただ呑気そうなパンダの姿が見えるだけだ。
「ほら!あの目…。さっきからあそこの小窓をずっと見てますよ。たぶん、そろそろご飯の時間なんでしょうね」
「……?」
「ご飯を狙うあの目つき…やっぱり熊なんですね、パンダも」
柚子は少し興奮気味だ。