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不良の彼は 甘くて強引
第27章 柚子の過去
…ミャーー
「……?」
無我夢中の柚子がたどり着いたのは、野良猫集まる猫屋敷。
夏に来る時はいつも沢山の猫たちがいるけれど、冬になるとどこに隠れるのか…彼らはいなくなる。
「君…ひとりぼっちなの?」
ニャン
「そっか…。おいで、おいで…怖くないから」
柚子はその場にしゃがみこんだ。猫を呼ぶには目線をあわせるのが鉄則だ。
警戒しながらも関心を示すそのただ一匹の黒猫は、彼女の手が届くか届かぬかの位置で可愛らしくニャンと鳴く。
柚子はクスッと笑った。
「匠さんは犬嫌いだけど…君のことは好きかなぁ」
ぼそり呟いたその言葉は、独り言か、はたまた猫に話しかけているのか…。
シェパードに威嚇する彼の顔…
ダックスフンドに戸惑うその姿。
あの匠さんが、唯一苦手な動物たち。
「こんなに可愛いのにね」
首を傾げる黒猫に手を伸ばしたまま、柚子は眉を寄せて切ない笑みを浮かべた。