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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符
自分で自分がわからないとは…まさにこの事。
でも、このまま…
このまま二度と会えないなんて…きっと後悔する。
自分一人で悩んでいる間に匠さんがいなくなったら
わたしはこの想いをどうすればいいの?
柚子は祈るような気持ちで
匠が出てくるのをただ待ち続ける。
.........
「──…お前…、凍死するのが趣味なのか」
「…」
背後から掛けられた彼の声。
「匠さん…っ」
「医学科だからといっていつもその校舎にいるわけがないだろう…。俺が現れなければずっとそこに突っ立っとくつもりだったか」
「…ごめんなさい」
どこか懐かしい…
そんな二人のやりとりだった。
「でも…ならなんでここに…?」
「忘れ物だ」
そう言った匠は、柚子の前を素通りして校舎の中へ入っていく。
「……」
彼の後ろ姿を眺める柚子。
長らく見ていなかったその背中を、彼女は懐かしむように目で追っていた。
「・・・」
突然に立ち止まった匠は、背後で固まったままの彼女を見やって 大きく溜め息を漏らす。
「…そこで何をするつもりだ。今すぐ帰るか、……話があるのならさっさと中に入れ」
もうすぐ終わるであろう冬も
まだその影を隠す気配はない。
この寒風に晒したままでは
気になって仕方がなかった。