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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符
回れ右をした柚子の脚。
このままだともう会えなくなる──
そう思った途端にどうしようもないくらいの焦燥感が彼女の胸を震わせ、突き動かした。
あれから二ヶ月近く…
彼女が匠と会うことはなかった。
同じ大学に通おうとも学部の違う二人が顔をあわせるようなことは滅多に起こりはしない。
二人が、互いに会おうとしない限りは。
「…ハァ」
柚子は医学科の講義舎の出口で彼を待つ。
すでに帰っているとか…
別の研究室にいるとか…
そんなことを考える余裕は今の彼女にはなかったようだ。
彼と仮に会えたとして、いったい何を話せばいいのか。
そんなことすらわからない。
以前、匠のアパートに尋ねた時は明確な方法こそわからぬものの、彼を説得したい、…また一緒にいたいという目的があった。
だが今の彼女にはそれがない。
何故ならば、匠を拒絶しているのは他ならぬ彼女自身かもしれないからだ。
柚子の内に知らぬ間に根付いていた…復讐心が
健吾によって知らされた事実によってあの日以来、その矛先を匠に向けてそらそうとしないのだ。
彼女の恋心を
知っていながら──