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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符


「──…もうあの日で最後だと、言った筈だな」

「……っ…」

「…何故来た」


そう言って振り向いた彼の顔は、咎めるような表情ではなかった。

その声に、問いただすような色は含まれていなかった。



「わたしは…──」


匠さんに、会いに来たの。




「……」


ゆっくりと匠の瞼が下がり
そして同様に開かれる。

前へ動き出した彼の長い脚は
靴音のリズムを刻みながら少しずつ彼女に近づき

目の前に止まった。



「…そんなことを言われたら、またお前を手放しづらくなるだろう」


このまま何もかも…
お前の全てを奪って連れ去りたくなる衝動


だが…



「どうして手放すの…っ」


「……」



だがその衝動は


俺の本意ではない──




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