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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符


「俺がお前を手放すのは、俺が賭に負けたからだ」


「賭…?」



匠と柚子の間で、かつて行われた、その賭。



『 ──…なら、勝負をしてみるか?お前が俺を許せるかどうか…。許した時が、俺の勝ちだな 』



…それは
匠の勝利で終わった筈だ。




「…でもあれは…!」

「フェアじゃなかったからな。あの時はまだ…俺の全てを知らなかっただろう」

「……っ」


匠が負ける…
そのことが指し示す事実。

自身の迷いを見透かされた柚子は言葉につまった。



あの頃は

紗織さんも無理やり犯されていたという話を聞いて…匠さんはそういう人間なんだから、惹かれてはいけない

それが自分の本心だと思おうとした。


でも紗織さんの心の傷を理解するには、彼女があまりにも明るく、弱さを見せない女性だったから…

わたしは、その事実を軽視してしまっていたんだ。



彼への恋心を
すんなりと受け入れて


自分勝手に、匠さんのしてきたことを考えないよう記憶の隅に追いやってきた。




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