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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符
「…ふっ」
上目遣いで真っ直ぐと自分を睨みつけてくる。
そんな顔をされても怖くもなんともない。
むしろ…
「冷めた俺を、温めようとしたのはお前だ」
匠はもう一度、掴んだ彼女の頭を自らの胸に押し付けた。
「お前のために変わる。…この約束だけは守ってやるから感謝しろ」
「…っ」
いや、違うな…
「俺はお前に感謝している……柚子」
《…ありがとう》
最後の一言が
彼の口から発せられることこそはなく
代わりに匠が言った言葉は
すまなかった
その一言だった。
「わざわざ運ばせて悪かったな」
柚子から受け取った紙袋を彼女に見せるように持つと、掴んでいた頭が離され、彼の指がその黒髪を優しくとかす。
「──…気をつけて帰れ」
俯く柚子の顔を覗き込みそう言い残すと
匠は講義室を後にした。