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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符


「お前は確か、俺にこう言ったな…

父親を亡くして悲しむ俺は狂ってなどいないと…。普通の感覚を持ち合わせた、普通の人間だと」


「──…」



だがそれは間違いだ。


「──…俺はな、父親が死んだと知っても何も感じなかった。俺が嘆かずにいられなかったのは……、それほどまで温度を無くしていた自分自身だ」


俺という人間はここまで

人間としての感覚を失った、冷たい生物になっていたのかと…。




「……!?」


匠の足元をじっと見ていた柚子が顔をあげると、自らの頭に置かれた彼の手と、それ越しに見える切ない笑みが…。



「…なんで」


「?」


「なんでそれを… " 今 " 言うんですか…!!」


柚子は彼をきっと睨んだ。


「そんなことを言われたからって……っ」


それで匠さんを嫌いになれるなら

こんなに苦しくない…!!




「卑怯ですよ…ッ」


「……」


そうやってまた
あなたはわたしから逃げようとする。




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