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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける





二人が京都駅に着いたのは正午過ぎ。

柚子のお腹が音を鳴らして
何か食べたいと翔に催促をし始めたころ…。



「……」

「ご、ごめんなさい!…ずっと鳴っていますね…//」


一定の間隔をおいてキュルキュルと鳴るお腹を抱えた柚子は恥ずかしさに俯き、音よ止まれと心の中で念じをかける。

効果はあまり…なさそうだが。


「ハハッ…お腹は正直だね」

老舗の蕎麦屋に行こうかと考えていた翔は予定変更、駅内で簡単にすませることにした。





───





「…その場所はここから遠いですか?」


駅内の飲食店はご飯時の影響もあってどこも行列。

唯一空いていた喫茶店で食事をすませた後、柚子が尋ねた。


「…いやそれほど遠くもない。ただこの時間は観光客がいるかもしれないから、ぎりぎりまで遅らせたいんだ」


五時ごろがちょうどいい
それでもいいかい?


翔の提案に頷いた柚子だが、そうなるとあと数時間…隙間ができてしまった。


「…ならせっかくだから、近くのお寺を巡りたいです」


高2の修学旅行以来…。

あの時行かなかった場所もたくさんある。



「柚子ちゃんから提案してくれるなんて嬉しいな」


はにかむような笑顔を向けた翔は、コップを傾けて水を一口流し入れた。



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