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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける

「…困ったな…、発車の時間は決まっているんだ」

先に切符を買っておこうか。

翔は改札口に向かい駅員に声をかける。





「…ええ、それの指定席を二枚。往復でお願いします」

「先輩?やっぱり新幹線で行くんですね」

「ああ、そうだよ」

「何処ですか?」


「……」

駅員から切符を受け取った翔はその半分を彼女に差し出した。



「…ここ…?」


「そうだよ。…千年の歴史、──…京の都だ」








───






暫くの時間をつぶしたあと、二人は京都へ行くべく新幹線に乗り込む。



…流石に、目的地に着くまではある程度の時間がかかりそう。

暇つぶしの物を持ってきた方が良いっていうのは、こういうことだったのね。



発車のアナウンスが流れドアが閉じる同時、柚子は鞄から参考書を取り出した。



「──…」


そしてそれを開いたまま、彼女の目は自然と…窓の外、流れる景色に向けられる。




…わたしは今から
この街を出て京都へ行くんだ。

そこに何があるのか、何を見つけるのか…それは先輩にしかまだわからない。




“…これでいいのかな ”


こうしている間にも、匠さんは今どうしているのか…そんな事ばかりが気になって…

柚子の心に不安がよぎる。




「……大丈夫だ」

「……!」

「きっと見つかる…」



柚子の横で手にした本に目を通したまま

翔は彼女に囁いた。




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