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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
「…俺は此処にこうやって…時間を無駄に使うのが好きなんだ」
段になったその場所に腰掛け、両手を後ろについてゆったりと眺めていた。
「……」
写真では何度も見てきたけれど…こうやって目の前に広がっているとやっぱり…。
「…柚子ちゃんは…退屈かい?」
「いいえ」
気を遣って尋ねた翔に、柚子は頭を左右に振った。
「退屈なんてしません。むしろ何故だか緊張して…──」
「…落ち着かない?」
「少しだけ…」
柚子は正直に答えた。
もともとこの石庭には、写真を見るたびに彼女は違和感を持っていた。
茶道、生け花、日本庭園……。
変化をまぬがれぬ物、跡に何も残さないもの…。
" 個 "を主張しない控えめさ、儚さを美徳としてきた日本人と
彼らが作り上げてきた日本独特の芸術理念。
その中で、この庭だけがぽっかりと浮いているように思えていたからだ。
造られた当時から、全くの狂いを許さないままに、創作者の想いが受け継がれている。
…だからだろうか
このピリリとした緊張感は。