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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける

「…日本らしくは、ないですよね…」

柚子は隣の翔に申し訳無さそうに笑ってみせた。

それを見た翔も
同様に彼女に向かって笑顔を見せる。



「…なるほどね、確かに日本の美徳感覚で考えると、ここはある意味" 例外 "かもしれない。……じゃあ少しだけ…俺がこの庭を弁護しようか」


「弁護ですか?」


なんだか先輩と法廷でやり合ってるみたい…

柚子は可笑しく思いながら、彼の言葉を待った。



「…この庭はまだ不完全だ」

「そう…なんですか?」

「本来は15の石…どの場所からも14つしか見えない話は有名だよね」

「…そういえば、そんな話もあったような…」



何処から見ようとも、必ず一つが足りない…

そこに大きな意味づけが存在するのか、はたまた、ただ庭の小ささによる必然的なものなのか…。そこは議論が分かれているところだ。


でも俺はこう思うんだ。



「十五夜( 満月 )があるように、15というのは完全な姿だ。この庭を造った人間は…完璧な芸術を生み出したいと思った」


砂と石…決して朽ちることのない材料を用いて、自らの作品を、その芸術をこの場に凍り付かせようとした。


だが、それでは
ひとつ矛盾することがある。


「《完全なものに待つのは、崩壊でしかない》……これが当時の価値観だったから…このまま完全なものを造ったら、彼の作品は崩壊するしかなくなってしまう」


「……」


「…だから、逃げたんだよ。彼は…完璧な作品を諦め、一つ足りない不完全さを、崩壊を防ぐための拠り所にしたんだ」



完全を恐れる
…日本人的な解決策だと思わないかい?




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