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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
だが、彼が柚子に見せたいと思ったのはその仏像ではなかった。
「…今日はそれじゃない」
「…?」
「こっちだ……」
翔は後ろを振り向く。
観音立像と向かい合うように
霊宝殿の正面、他より高いその場所に
その御体は座っていた。
「──…」
半跏思惟像
柚子は思い出した。
このお寺の名前を見た時、よく聞く名だとは思っていた…。
そうか
この仏像が…置かれた場所だったのね。
《宝冠弥勒菩薩半跏思惟像》
柚子はその文字を頭のなかで読み上げる。