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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
「──…」
…カツン
中に入れば、そこはなかなかに薄暗い。
柚子たちが入るとほぼ同時に出てきたカップル。
中にいたのはその二人だけだったようで、静まり返ったその場所では…彼女の控えめな靴音もよく響いた。
壁に沿ってぐるりと配置された仏像の足元が朱っぽい明かりで照らされている。
十二神将立像…。
各々に異なった武器を手にして餓鬼を踏みつけながら、恐ろしい表情でこちらを睨みつけていた。
そんなルールなどはどこにもないのだが、柚子は自然と声を発するのを控えてしまう。
そしてちょうど──
霊宝殿の中心に位置する場所には、高さ4mはあろうかというほどの仏像が……。
「…緊張する?」
圧倒気味に見上げる柚子に翔が小さく耳打ちした。