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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
わたしは…
匠さんを、好きで居続けてもいいのですか……?
彼の過去を知っておきながら
それでも彼に惹かれるわたしの心は──
赦されることですか?
「……」
菩薩を真っ直ぐ見上げる柚子の、その問い掛けに…答えが返ることはない。
薄暗い館内で、どこかもの哀しいその笑った口元が
直接彼女を導くことはない。
───
気付けば、閉館の時刻は過ぎていたようだったが
二人が出るように催促を受けることはなかった。
翔がちらりと後ろを見やると
係の男は入り口で静かに見守っている。
無言で頭を下げた翔に、その男性は笑顔を向けて軽く会釈をした。