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不良の彼は 甘くて強引
第30章 君、想い…


こんなことなら…──


もっと早くに、彼女を奪うべきだった。


柚子を諦めるという選択が、これほど苦しいと知っていたなら…。




毎日のようにベンチに腰掛けともに過ごした時間

いくらでもチャンスはあった筈だ。


浴衣祭りの日でも

彼女を家に泊めた時でも

クリスマスの夜でも…


越えてはならない一線を恐れた俺は何もできなかった。




もっと早くに

奪っていれば…




「それとも初めから勝ち目などなかったのか…?」


そんなこと

今更、わかる筈もなかった。



確かなことは、彼女の心にはいつでも…、市ノ瀬の存在があったこと。


彼女はいつだって、市ノ瀬を想って泣いていたことだ。




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