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不良の彼は 甘くて強引
第30章 君、想い…


柚子の服から手が引き抜かれ、髪の乱れた後頭部に添えられる。


その手は震えていた。



「……何故…、──…君が謝るんだ…!」


「……」


余裕のない翔の声。

柚子は押し付けられた彼の肩に頭をあずけて、もう一度…静かに繰り返した。



「…ごめんなさい……、わたし…っ…」

「……!」

「ここで先輩を受け入れたら、わたしは…っ…自分のことを…嫌いになってしまう……!」




「どうしてそうなる…──?」


翔は益々動揺した。





君は何も、悪いことなどしていない。

俺が…無理やり奪おうとしているのだから。


「君を待つと、そう──約束したのに…っ…!」


──俺は待てなかった。

待てば待つほど離れていく…
君をどうしても、市ノ瀬に渡したくなかった。



悩む君に手をさしのべてきたのも
すべて偽善者の姿。

穢れているのは俺の心。


君が自分を嫌う必要なんて何処にもない…!!




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