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不良の彼は 甘くて強引
第31章 それぞれの選択
しばしの沈黙の後、匠はようやく諦め
ゴールに向かって構えた。
“これを、入れれば ”
もう二度と柚子に会うことはない…。
そう思った匠の脳裏に、自分を見上げる彼女の潤んだ瞳が
ふわりと良い香を漂わすその黒髪が…
バイクの上で必死にしがみついてくる小さな手が…
浮かんでくる。
「……っ」
いや、こんなくだらない勝負
どうなったとしても約束を守る義理などどこにもない。
「…躊躇するのかい」
構えたままでなかなかシュートをうたない彼に静かに尋ねる。
翔の目はじっと、匠の迷いを見守っていた。
「いや…大丈夫だ」
これは俺への試しだ
柚子を諦めきれるかどうかの…。
「くだらない賭だが、付き合ってやる」
こんなことも乗り越えれぬようでは
俺は柚子を本当の意味で解放することはできないだろう。
匠は集中し、ボール越しにあるリングに狙いを定める。