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不良の彼は 甘くて強引
第31章 それぞれの選択

跳ね返ったボールは、ちょうど翔のところまで転がった。
「次はお前の番だ」
「……」
転がってきたそれを掴み、翔は3ポイントラインまで数歩だけ下がる。
ゆっくりと腕を上げ
ゴールに向き合った。
「……っ」
だが、彼もなかなかすぐには投げれなかった。
構えたまま止まった翔は眉間に皺を寄せ、街灯に照らされたそのゴールに睨むような目線をおくる。
ギリッ……!
固く閉じた歯が音をたてた。
「…早く投げろ」
しびれを切らした匠の催促が聴こえる。
「…!」
不意に、彼は構えた腕を下ろした。
うなだれるように下を向き、はぁーと深く溜め息をつく。
…そうして右手に持ったボールを見やると
手を裏返してそれを落とした。
「──…?」
そこだけがスローモーションのように…
自由落下したそのボールは、地面で真っ直ぐ跳ね返る。
跳ね上がってきたそれを、翔の手がすくい上げるように掴み直すと──
「……っ…!」
彼はゴールから顔を背け
此方を眺めて立ち尽くす匠に向き直った──

