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不良の彼は 甘くて強引
第32章 湧き立つ想い


翔の呼吸の乱れがおさまってくるのを確認して

匠は彼に背を向ける。



「…ああ、あとひとつ…聞きたいことがあるんだけど」


ベンチに座る翔が呼び止めた。




「何だ」

「…君は彼女の、どこに惚れたんだ」

「……」



立ち止まった匠

数秒ほど間をおいて答えた。



「…ヤってる時の喘ぎ声だ」


「──…、…最低だな…」



匠の返事に呆れた溜め息を漏らす翔。

そんな様子の彼を、匠は馬鹿にしたように軽く笑った。



「お前はどうなんだよ」

「俺は……、一目惚れだったから…」

「……」

「顔…かな」

「…ふん」



鼻で笑った匠は、止めていた足を再び歩かせる。



「お互い様だ…」













立ち去った匠。




ベンチに背をあずけ、空を仰ぎ見る翔。




「…あとは君の気持ち次第だ、柚子」




これで少しは、襲ったことの罪滅ぼしになっただろうか。






「……」





結局あいつは最後まで…


俺を名前で呼ばなかったな。








────…




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