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不良の彼は 甘くて強引
第32章 湧き立つ想い

柚子はシャワーカーテンを少し引き、脱衣所にかけられたタオルを取った。

そしてお湯を抜いたバスタブの中で身体を拭く。



「どうして…なんだろう」


水の滴る蛇口を無心に見つめながら、ぼそりと独り言がこぼれる。






“どうしてわたしは…匠さんを好きになったの? ”





もともと、男の人が苦手だった自分。

特に、彼のような人は

わたしが一番苦手で、軽蔑してきた人間。



なのに…

時折見せる彼なりの優しさや

人を惹きつけるカリスマ的な魅力に、ときめかずにはいられなかったから。


彼にとってはただの遊び…そうわかってはいても、あの目に見つめられるたびに胸の内を掻き乱された。




…きっかけは、そんな単純なことだったんだ。





「……」



そこで終わっていれば

こんなに苦しくはなかったのに。





海で彼に抱かれた時

わたしは──愛されている気がした。


遊びじゃない。匠さんもわたしのことを想ってくれているって…そう思えたから…。




…そこからわたしは変わったんです。




一方的だったわたしの想いがストンと胸の奥に落ちる。



わたしを愛してくれる、この人を

もっと深く受け止めたいと…そう感じるようになったの。




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