この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不良の彼は 甘くて強引
第32章 湧き立つ想い
「──…それでも」
「……?」
「匠さんを好きなわたしを赦してくれますか」
「…!!…柚子…!?」
柚子の発したその言葉は匠へのものではなかった。
目の前の彼を通り抜けて
もっと遠くの…他の何かに問いかけていた。
《 赦して下さい 》
柚子が京都で、弥勒菩薩の前で願ったこと。
それは彼の罪への赦しではなかった。
その拭われぬ罪を背負った匠を…好きで居続けることの
自分への赦し…。
しかし菩薩は、彼女に何かを与えるわけではなく
ただ、微笑んでいた──。
「あなたみたいな悪い人を…!!……嫌いに…なれない…っ」
そんな勝手な自分を
赦して欲しいけど
「だれも赦してはくれないから!!」
「──…っ!!」
柚子は彼女を覗き込む匠の、その首に抱きついた。
彼が逃げないように…
腕にいっぱいの力を込めて。