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不良の彼は 甘くて強引
第32章 湧き立つ想い




「──…それでも」


「……?」


「匠さんを好きなわたしを赦してくれますか」


「…!!…柚子…!?」



柚子の発したその言葉は匠へのものではなかった。


目の前の彼を通り抜けて

もっと遠くの…他の何かに問いかけていた。







《 赦して下さい 》



柚子が京都で、弥勒菩薩の前で願ったこと。

それは彼の罪への赦しではなかった。


その拭われぬ罪を背負った匠を…好きで居続けることの

自分への赦し…。



しかし菩薩は、彼女に何かを与えるわけではなく

ただ、微笑んでいた──。





「あなたみたいな悪い人を…!!……嫌いに…なれない…っ」


そんな勝手な自分を

赦して欲しいけど


「だれも赦してはくれないから!!」


「──…っ!!」


柚子は彼女を覗き込む匠の、その首に抱きついた。



彼が逃げないように…

腕にいっぱいの力を込めて。






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