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レモンティーな朝焼け―母娘調教―
第1章 幸せの風景(第一部)
「圭ちゃんっ・・・」

香奈子がキッと睨むと首をすくめた。

「ごめんなさい・・・」

その仕草が可笑しくて晴彦は吹き出した。

「ハハハハッ・・・」

明るい声で笑う父と目が合うと、母に見えないようにぺロッと舌を出した。

(ママったら、いつもそう・・・)

圭子にとって、母の存在は絶対だった。

決して人の悪口を言う事など、許す人ではない。

カップを手に取り、レモンティーを飲んだ。

酸味がジーンと口の中に広がる。

母の方に視線を向けると、同じようにカップを口に運んでいた。

長い睫毛が揺れている。

上品なその仕草には、ため息が出る程だった。

友達のみんなが羨む程の美貌とプロポーションの持ち主である。

容姿以上に清らかさが評判だった。

どんな相手にも分け隔てなく応対する。

圭子が通う学校では、小学校から高校まで常にPTAの活動を先頭だってやってきた。

学校行事だけでなくボランティアの奉仕活動も積極的に参加しては、その美貌もさる事ながら、天使のような笑顔と優しさで人々を魅了していたのである。

そんな母を圭子は理想の女性として憧れていた。

そして心から愛してもいた。

父もそうだが、それ以上に母が大好きだったのである。

香奈子も娘を溺愛していた。

だが、甘やかしていたわけではない。

二年前に亡くなった父の影響もあるのだろうか。

娘には愛情だけでなく、時には厳しい態度で接していた。

自分が習い得た礼儀作法や茶道、華道それに日舞にいたるまでも優しく丁寧に教え、伝えたいと考えている。

香奈子にとって、娘が人生そのものなのだ。
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