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縛られたい
第2章 仕事、そして阿部さんの家族とのあれこれ〜まりあ
月曜日は一応初出勤ということで、
紺色のワンピースにバーバリーのコートという、
王道なスタイルで駅の裏側にあるロータリーに5分以上前に到着した。

パソコンスクールに行く時にも使っていたヴィトンのエピのドキュメントバッグにノートパソコンを入れて、
お揃いのショルダーを斜め掛けした。


約束の時間を過ぎても、
紺色の車は現れなくて、少し不安になってくる。

10分ほどして、
名刺を取り出して載ってる携帯に電話を入れてみると、
「運転中で…」という機械の音声が流れた。


(運転中ってことは向かってるってことだよね?)と思って、
そのままのんびり待っていると、
更に10分以上経って、ようやく車が到着した。


少し慌てた顔で車から出て、
ドアを開けてくれるので、
「おはようございます」と言って助手席に乗った。


阿部さんは車を発進させる前に、
「ごめんね。
すごく待たせちゃったよね?
寒かったでしょう。
電話番号、聞いておけば良かった。
連絡出来なくて…」と平謝りだった。


「さっき、頂いた名刺に書いてあった番号に掛けてみましたから、
それ、私の番号ですよ」と言うと、
後ろに置いてあるバッグから携帯を引っ張り出して、
「ホントだ。
着信にも気が付かなかった。
あ、ドライブモードにしてあったのか」と顎を掻いた。


ようやく落ち着いたのか、
車を発進させた。


道路が少し混んでいたけど、
15分ほどでご自宅兼事務所に到着した。

ドアも2つで、
事務所側のドアから中に入る。

変形の六角形みたいな処に、多分特注のデスクが同じ形に備え付けられていて、
レカロ製の革の椅子が2つ置いてあった。


片方は阿部さんが使っているらしくて、
モニターやらマックのマシンやらと書類が積んである。

もう片方は、何も置いてなくて、
「ここ、渡辺さんの席で良いかな?」と言われる。

椅子の高さも、私にちょうど良いみたいだった。


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