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縛られたい
第4章 優子さんの願い〜まりあ
病室に入ると優斗くんは硬い表情で、
「お母さん、こんにちは」と言った。
痩せて黒っぽい皮膚になってる奥様は、
私の母と似ていた。
勿論、年齢も顔立ちも違うけど、
気配みたいなものが本当に似ていた。
「初めまして。
渡辺まりあと申します。
3月1日から阿部さんの事務所で働き始めています」と、
私は頭を下げた。
そして、
「ご家族でお話しされますよね?
私、外に出てますね?」と言うと、
奥様は小さい声で引き留めるようなことを言った。
「お母様、翠さんですよね?」
「えっ?」
「時々、お話をしていたの…」
「あの…母が『yo-chan』って日記に書いていたの、
『you-chan』だったのかな?
よーちゃんって書いてあるのかと思ったけど、
ゆーちゃんで…
優子さんのことだったんですか?」
奥様はそっと頷いた。
私の目から涙が溢れてしまう。
「ありがとうございました。
たくさん、話を聞いてくださってたと書いてありました。
私には話せないようなことまで、
聞いてくださっていたって…」
「あら。
私も家族に話せないこと、
たくさん聞いて頂いていたのよ?
まりあさんに会えて嬉しいわ?」
と、静かに言う。
阿部さんと優斗くんが不思議そうな顔をしている。
「嫌じゃなかったら…
阿部と一緒にじゃなくて、
お一人でいらして?
先が短い私の愚痴を聞いて貰えると嬉しいわ?」と、
クスクス笑う。
「私なんかで…?
母の話も聞いてあげられなかったのに…」
「身内にはね、
変に遠慮しちゃうから、
話し難いこともあるのよ。
ね?
貴方?」と、阿部さんを軽く睨むようにして優子さんは言葉を切った。
「優斗は…サッカー上手くなったの?
勉強はしてる?」
「まあまあだよ。
勉強は、普通」
「…ごめんなさい。
ちょっと苦しくて痛い…。
お薬、お願いしてくれる?」と急に奥様が言うので、
慌ててナースコールを押す。
バタバタと看護師さんが来て、
点滴に薬剤を入れる。
「また、来てね?
絶対よ?」と呟くように私に言うと、
奥様はそのまま眠ってしまった。
「お母さん、こんにちは」と言った。
痩せて黒っぽい皮膚になってる奥様は、
私の母と似ていた。
勿論、年齢も顔立ちも違うけど、
気配みたいなものが本当に似ていた。
「初めまして。
渡辺まりあと申します。
3月1日から阿部さんの事務所で働き始めています」と、
私は頭を下げた。
そして、
「ご家族でお話しされますよね?
私、外に出てますね?」と言うと、
奥様は小さい声で引き留めるようなことを言った。
「お母様、翠さんですよね?」
「えっ?」
「時々、お話をしていたの…」
「あの…母が『yo-chan』って日記に書いていたの、
『you-chan』だったのかな?
よーちゃんって書いてあるのかと思ったけど、
ゆーちゃんで…
優子さんのことだったんですか?」
奥様はそっと頷いた。
私の目から涙が溢れてしまう。
「ありがとうございました。
たくさん、話を聞いてくださってたと書いてありました。
私には話せないようなことまで、
聞いてくださっていたって…」
「あら。
私も家族に話せないこと、
たくさん聞いて頂いていたのよ?
まりあさんに会えて嬉しいわ?」
と、静かに言う。
阿部さんと優斗くんが不思議そうな顔をしている。
「嫌じゃなかったら…
阿部と一緒にじゃなくて、
お一人でいらして?
先が短い私の愚痴を聞いて貰えると嬉しいわ?」と、
クスクス笑う。
「私なんかで…?
母の話も聞いてあげられなかったのに…」
「身内にはね、
変に遠慮しちゃうから、
話し難いこともあるのよ。
ね?
貴方?」と、阿部さんを軽く睨むようにして優子さんは言葉を切った。
「優斗は…サッカー上手くなったの?
勉強はしてる?」
「まあまあだよ。
勉強は、普通」
「…ごめんなさい。
ちょっと苦しくて痛い…。
お薬、お願いしてくれる?」と急に奥様が言うので、
慌ててナースコールを押す。
バタバタと看護師さんが来て、
点滴に薬剤を入れる。
「また、来てね?
絶対よ?」と呟くように私に言うと、
奥様はそのまま眠ってしまった。