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縛られたい
第4章 優子さんの願い〜まりあ
帰りの車の中でも私は泣いてしまっていて、
優斗くんがずっと手を握ってくれていた。

小学生でも、男の子はちゃんとオトコで、
「大丈夫?」って言いながら、
手をギュッと握ってくれて、
涙をティッシュでそっと拭ってくれてた。


家まで送ってくれて、
「何か、飲んで行きますか?」と言って、
2人を家に上げた。


「広い家だね?」と、
阿部さんが呟く。

「でも、何もないんです。
広すぎて怖くて…。
だから、マンションに引っ越すんですよ?
リフォームとハウスクリーニングしたから、
寝室に使ってる部屋以外は、
何もないの。
冷蔵庫もないから、
ブラックコーヒーかティーパックのお茶しか、淹れられないですよ?」と笑った。


お湯を電気ポットで沸かして紅茶を淹れて、
3人で床に座って飲んだ。


「あっ…そうだ」と、
私は自室から革の手帳を持ってくる。


「これ、母の手帳で、最期は日記にしてたみたいで…。
英語で書いてて、文字も力がないし、
筆記体で読み難いけど…
yo-chanってあるの、『よーちゃん』のことだって思ってました。
youで、『ゆーちゃん』だったんですね?
たくさん母の話を聞いてくださってたようで…。
本当に優しくしていただいてたみたいでした。
ありが…」

もう言葉を続けられなくて、
また、泣いてしまった。


「まりあさん、大丈夫?」
と、優斗くんが私の名前を呼ぶ。


「やだ。
下の名前で誰かが呼んでくれるの、
久し振り。
なんか、嬉しい」って、
優斗くんをハグすると、
優斗くんは紅くなってジタバタする。



「あ、ごめんなさい。
つい。
周り、欧米人が多かったから、
すぐ、ハグとキス、しちゃうの、
気をつけてたんだけどな」


「えー?
キスも?」


「やだ。
挨拶のキスよ?
軽いヤツだけね?」と言うと、
優斗くんは益々紅くなる。


「優斗くんだって、
彼女とチューしてるでしょ?」


「してないよ。
彼女とか、居ないもん。
女子なんてうるさいだけだよ?」


「そっか。
まあ、男子は強くなって、
女の子を守ってあげないといけないし、
大変だよね?」
って笑うと、

「クラスの女子なんて、
ゴリラみたいなヤツか、
子猿みたいなヤツばっかりだよ?」と膨れるから、
阿部さんと2人で笑ってしまった。


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