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女たちは生きる
第1章 一 由美
出会いも沢山 
別れも 沢山
笑顔も 沢山
涙 も 沢山 あった
それでもあの人だけは唯一のひと

なのに繋ぐ手はない
それが人生?

由美は寒くて寒くて堪らない

「よく判ったわ たった一カ月で
私たちの四年間は海の藻屑となり
驚く事にさ 消えたわけね」
由美は向かいに座る男を睨みながら
吐き棄てるように言った

「またまた 
お前の下半身は
別れるの嫌だってさハアア」

ったくだから馬鹿は嫌なんだ
「私が別れるって言ってんだから
別れるの! 
下半身は喋らない!バ~カ」

男は下を向いて押し黙っている
はったりだ!いつもの事だ~
凌げ凌げ

由美は続ける
「その女の所に帰りなさい
居心地良いでしょ 
好きに出来るんだからさ
じゃあ さようなら!」

由美は男の肩を小突いて
店を出て行った。

本当は横面張り倒したかったが
そこまではできないよ
だって大好きだから
悔しいけどね

店を出ても震えは容易には
おさまらなかった
体は暑苦しい空気を
さも愛おしそうに纏うが
瞬時に鬱陶しがられる

由美は夏の暑苦し空気は自分と同じだと鼻で笑った

喫茶店に残してきた男を
思い浮かべている

男は気付いていない
馬鹿だから 
心の中で由美が消え始めていることに

振られた!取られたんだ!

悲しいことに それは現実だ

由美はその足で携帯を解約した

男は顔上げ徐に冷めたコーヒーを飲んだ
三日もしない内に連絡がくる事は
判っている

あいつは絶対に謝らないが
夕飯はなに食べたいか聞いてくるんだよ

この時期だから
冷や奴…後は生姜焼きだ 
ビールもな
なんて感じで許し許されていた

本当可愛いんだよ
キツい女だが別れられない。
あれの具合もいいしなぁ

しかし思惑は外れた
由美からはあれっきり
連絡が無く
携帯も解約されていた

数日後
ポストに
入ってた封筒のなかには

荷物は適当に処分して欲しい
と走り書きされた紙切れ
処分代金一万円
合鍵

本気だったのか
なぜだ。
いつもの事だったはず
三ヶ月帰らなくても
許し迎え入れてたじゃないか
なぜ?何処に消えた!

男は一時的に錯乱状態に陥ったが
今は正気を取り戻して
息だけはしている


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