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女たちは生きる
第1章 一 由美
あの時の事は今も忘れられない
脳裏にベッタリ張り付いている

「お前さ いい加減男漁るの
止めたらどうだよ 俺がいるんだから」
「漁る?いつ何処で…人聞きの悪い事
言ってくれるじゃないのさ
仕事なんだわ…馬鹿!
ホステスは後引かせてなんぼなんだよ
素人じゃあるまいし
馬鹿!

それじゃあんたはどうなのよ?
私がいても誰彼構わず
突っ込んでいるくせに
何時までも待ってるなんて
思わないでよ」

男は薄笑いを浮かべ当たり前のように
煙草に火をつけようと
ライターを出した途端
由美に思いっ切り手を叩かれ
ライターを落とした

男はライターを拾い
舌打ちしながら
煙草に火を付けた

由美はじっと男の顔を見つめた

「そっか… ったく阿呆らしい」

ボソッと呟く由美の姿が浮かぶ
そして
最後は小突いて足早に出て行く後ろ姿

阿呆か~畜生

「あっ!煙草……」

男はやっと辿り着く

些細な事だ

然し

由美は…あの女は
男の無意識のなかの
意識を感じとったのか

一度たりとも破らなかった約束

「タバコは死んでも私の前で
吸わないで それ破ったら
お わ リ」


あの時の男は破ったのではない

今の今まで約束を忘れていたのだ

吸い始めた煙草を慌て消し

「意味ねぇな」
と呟く

残りの煙草とライターを摑み
ゴミ箱に投げすてる

冷えすぎた皮膚から訳の分からない汗が吹き出し 衝動的に
ベランダへ飛び出す

過呼吸 苦しい 

震える掌にぼたぼた落ちる雫

「ああ~ああ~畜生……なんで今
ああ~そうだよな 約束したよ
なのに…」

蹲っている男の肩に
暑苦しい空気が纏わり付く

恋しい 

逢いてぇなぁ

今年で三度目の威丈高な夏

刹那 男をあの日に引き戻していく
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