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遠き隣人
第1章 プロローグ
《ようやく苦労が実ったのかぁ•••。》
私は、以前お世話になった学校からの帰り道を駅へと足早に向かっていた。

お世話になったと言っても、大学時代に受け持った教育実習の学校でたまたま、臨時講師として赴任していたが、先日めでたく教員として隣街の女子校の就職が決まりその報告に来ていたのである。

理事長の鈴木氏にはよくしてもらったからである。
2週間ではあったが、“いく度となく”足を運んだ学校だったので、見慣れた景色を見ながら、校舎から駅へ続く坂道を下っていった。

2週間というと、臨時講師期間中には短く感じられるくらいの時間で、14日、336時間、20160分、まぁいいか。
てな具合に過ごすのが、普通の講師にとって当たり前である。

しかしながら、実際には長く長く感じられると思う講師も中には存在する。

早く終わってくれはしないか?質問されたら返せる知識があるか?馬鹿にされないか?
イジメなれないか?様々な事が頭をよぎりながらも、まだ1週間もある!とか思ったりする。

しかもここは、男子校。私のような女教師など、ましてやまだ20代前半の女教師にとっては、彼らの視線が痛かったりするだろう。

『しかし、こんな時期によく空きの教師のくちがあったわね。確か前の受け持ちの担任は、突然消えたらしいって聞いた•••。』

先週、挨拶に伺ったときに話しているのを耳にした。身内の人が荷物やらを引き取りに来ていたのを、ふと思い出した。

『ん?』

私が坂道を下って門に差し掛かったとき、私服の女学生らしき娘が入ってきて、私に軽く会釈し、校舎ではなく、旧校舎に入っていった。

『この学校の生徒じゃないわね•••。あんな娘見かけた事ないわ。転入生かしら?それなら職員室のある新校舎に行くはず•••』

きき•••ッ!
『乗ってくかい?先生!』
『わッと!脅かさないでよ!もう!』
助手席の車窓から顔を覗かせたのは、先日退学になったこの学校の元生徒の達也である。

達也は19歳で1年中学浪人して、入学してきたため、皆より1年先輩である。退学の原因も彼のせいではなかったが、クラスで歳上という理由だけで責任をなすりつけられた不運の持ち主。

『悪い噂が立つわ!あなたにとってもね』と口では言いながら、駅とは反対の方角へ向う車に滑り込んだ。









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