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真夏の夜の夢
第1章 序章
まあまあ、よう御越しくださいました
辺鄙な場所に立つ古びた温泉旅館ですので
たいしたおもてなしもできませんが
どうぞごゆっくりとおつろぎくださいませ
あっ!もしやあなた様は
あの有名な作家先生様ではありませんか?
ああ、やっぱりそうなのですね
当館にお迎えできましたことを光栄に思います
ささ、どうぞ…
お部屋へご案内させていただきますわ
女将は作家先生が来訪してくれたことを大層喜んで
満面の笑みで客を部屋に案内した。
道中、お疲れになられたことでしょう?
どうぞひと風呂浴びて
旅の疲れを癒してくださいましな…
今夜は先生様お一人の宿泊ですので
大浴場も貸切りでございます
女将に薦められて作家は
大浴場で汗を流した。
貸切りなのは良いけれど
大浴場にポツンと一人というのも味気ない。
先生様…
お湯加減はどうでしょうか?
えっ?最高の温泉ですって?
まあ!お褒め頂いて光栄ですわ
えっ?
のんびりしたいから
温泉から出ていってくれと?
まあ、いやですわ、
こんな萎びた温泉旅館ですもの
せめて私がお背中を流させていただきますわ
無碍に断るのも気が引けたので
作家は女将がそこまで申し出てくれるのならと
湯殿を出て、洗い場の椅子に腰かけた。