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真夏の夜の夢
第9章 第八夜
「おっ!良い形のキスが釣れ始めているじゃん」
勤務先の昼休み
出勤前にコンビニで釣りの情報紙を購入していた笹岡健介はウキウキしながら情報紙のページをめくっていた。
彼女も親友と呼べる仲の良い友達もいない健介にとって、唯一の趣味が夜釣りだった。
暗い海岸で竿の当たりを手で感じながら
会話をする必要もなく一人で黙々と竿を振るのが楽しくて仕方なかった。
「なんだい、また釣りの情報誌かい?」
同僚が健介が手にする情報紙の紙面を覗き込みながら、少しばかり小バカにしたように笑った。
「そんな魚ばかり相手にして何が楽しいのかねえ」
「人の趣味にケチをつけるのはやめてくれないか」
「いやいや、ケチをつけているんじゃないよ
でも、どうせ釣りをするなら
大勢で出掛けてさ、キャンプでもしながらの方が楽しいんじゃないかと思ってさ」
「そういうのは真剣に釣りを楽しんでいない奴が言うことさ
未明の真っ暗な海を相手に釣りを楽しむ。
これこそが釣りの醍醐味なんじゃないか」
「まったくお前は変わり者だよ
だから、彼女の一人も出来ないんだよ」
何とでも言えばいい。
その気になれば俺だって
女の一人や二人はモノに出来るんだ。