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桜が咲く頃逢えたら
第9章 新しいカタチ
私からは司法試験の話をして、
「もっと勉強して受かったら、
亮平さんのお仕事、手伝えるかな?」と言うと、
目を細めて、
「俺の方が食わせて貰うことになりそうだな」と笑った。

「だって、私、他に出来そうなことないし」と言うと、
「瑞樹は居てくれるだけで良いけど。
いや、セックス出来たらもっと良いけどね?」と笑われて、
紅くなってしまう。


「さっきも俺、なんか興奮しちゃって、
瑞樹のこと、虐めちゃったよ。
Sなのかな?」と言われて、
ますます紅くなりながら話題を変えようとして、
「勉強で忙しくなるかも」と言うと、
「俺も仕事、バタつくかも」と亮平さんが答えるので、
かなり寂しい気持ちになってしまう。


「送り迎えは相変わらず、
あの坊やがやってくれてるの?」

「えっ?
安西くん?
そうです」と言うと、
「ちょっと心配で妬けるけど、
あいつが居たら他のオトコを寄せつかなくさせるから、
まあ、我慢するか?」と笑った。


食事が終わって外に出ると、
タクシーを止めてくれて、
タクシーチケットを渡して、
「気をつけて帰るんだよ」と言いながら、
右手の手の甲にキスをして、
指輪をそっと撫でてくれた。




大学に戻って、こっそり教職員用のお手洗いに入って、
そっとナプキンを外すと、
濃厚な亮平さんの匂いがして、
顔が紅くなってしまう。

ウォッシュレットで洗って、
念の為、新しいナプキンを当ててから、
午後遅い授業を受けた。




その日は、予備校はない日だったので、
安西くんに大学から家まで送って貰った。


車を降りる時に、
手をそっと握って、
「あいつに会ったんだね?」と言いながら、
指輪を撫でた。


嘘はつけないので、
頷くと、
「セックスもした?」と、
安西くんにしては珍しくストレートな訊き方をした。


私は戸惑ってしまう。


「ちゃんと、ゴム、使った?」


答えられなくて黙ってしまう。


「妊娠してたらどうするの?」


「授かってたら産みます」と震える声で言うと、

「判った。
おやすみ」と言って、
私の手からそっと手を離した。



まもなく長い夏休みになる夜のことだった。



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