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桜が咲く頃逢えたら
第12章 安西くんと結ばれる
2月の結納までに、大学の試験の後半戦もあったり、
私のリハビリもあったりした。

ホテルでの結納では、
「成人式とは違うお振袖にしましょう!」と祖母が言って、
ママが結納で着たという振袖を着せて貰った。

結納と言っても、
目録だけを交わして、
家族写真や2人の写真を撮ってからお食事するだけだった。


「まだ学生だから…」と言ったのに、
安西くんからは、安西くんのお祖母様がされていたミキモトのアコヤ真珠とダイヤモンドをリメイクして作り替えた立派な婚約指輪を頂いてしまった。

私からは、
パパと相談してグランドセイコーの時計をお返ししたら、
「あら!
だったら、ペアの時計、今度プレゼントしないと!
ほら、真珠の指輪じゃ、
普段出来ないでしょ?」と、
安西くんのお母様に言われてしまう。



帰宅して2人になってホッとした。

マンションのベランダから隣の小さなお寺の敷地に咲く小さな河津桜の花が咲くのをのんびり眺めた。

ベランダに出たのも久し振りだった。

きっと、以前は私がそこから飛んで行ってしまうと思って、
手が届かない高いところに鍵をつけられていた。


「ベランダで、お茶を飲みたいの。
キャンプみたいに、
お湯、沸かしてくれる?」と言ったら、
安西くんは、いつか海でコーヒーを淹れてくれた時に使った小さいコンロを出してくれて、
手土産に貰った焼き菓子を食べながらのんびり紅茶を飲んだ。



ずっと人形のように感情を表に出すことも出来ず、
機械的に目の前にあることだけをこなしているだけの私を見ていた安西くんは、
「本当に元気になってくれて良かった。
瑞樹ちゃん、ありがとう」と笑った。



「結婚式もすぐね?
和装はお祖母様やママが着た着物になるの。
似合うのかしら?」

「絶対に似合うよ」

「ドレスは純白のものは、
安西くんのお母様がパリに手配してくださったの。
カラードレスは、安西くんが選んでくれたものだけど、
あんなに可愛い色、大丈夫かな?
私、黒、紺、グレーしか着たことないのに」

「桜みたいな淡いピンク、
絶対に瑞樹ちゃんにぴったりだよ?」と頭を撫でてくれた。


2人の手首には、地味で質素で、でもカッチリとした国産の時計が嵌められている。

すごくしっくりしていて、特に真面目な安西くんにはピッタリだなと思った。


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