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桜が咲く頃逢えたら
第3章 初めての夜
マンションを出ると、亮平さんは指を絡めて手を繋ぐ。

信号待ちで立ち止まると、
すっぽりと抱き締めてキスをするので、
恥ずかしくて顔が火照ってしまう。


バーに入るとオーナーさんが、
「おかえり」と微笑んでくれる。

江川さん達のテーブルにつくと、
「晋太郎さん、俺と瑞樹、
付き合うことになったから」と亮平さんがきっぱりした声で言った。


「お前さ、先輩に容赦ないよな?
離婚は?」

「調停離婚、成立したよ?」

「りんくんは?」

「親権、あっち。
でも、監護権はこっちにした。
そもそも、俺のコドモじゃなかったけど、
レイコ、全くりんのこと、みないしさ」と吐き捨てるように言うので、
驚いて亮平さんの顔を見てしまう。

「りんには、情はあるし、
治療費とかは出すつもりだし、
見舞いにも行ってる。
あいつは見舞いにも行かないからな」と続けた。


まだまだ、亮平さんのこと、知らないことばかりだと、
少し落ち込む。

キスだけで、好きになるなんて、
自分が軽薄な気がしてきてしまう。


そろそろ店仕舞いの時間になる。

集合写真を撮ることになって、
お店の外に出て、
思い思いのポーズを取りながら並んだ。


亮平さんが抱き寄せると、
反対側に立った江川さんも私の腰に手を回して、
2人で私の頬にキスをするので、
私は驚いてしまう。


亮平さんが頭の上で、江川さんに何かを言って、
江川さんもそれに応えているみたいだったけど、
賑やかで声は聴こえなかった。


「解散!」
と、オーナーさんが言うと、
淋しい気持ちになってしまった。


「飲み直さないか?」と江川さんが言うと、
「亮平さんの家に行きたいっす」と、ジャンボさんが紘子さんを抱き寄せながら言った。


「良いけど、何にもないよ?
すっかり空っぽ」と亮平さんは言いながら、
「瑞樹、俺の部屋に来てくれるよね?」と耳にキスをしながら囁いた。
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