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桜が咲く頃逢えたら
第3章 初めての夜
部屋に入ると、玄関に靴が脱ぎ散らかされていた。

ルブタンの靴がひっくり返って、
なんだか可哀想になってしまう。

しゃがんで向きを直して並べてから、
洗面所に入ってうがいと手洗いをする。

鏡を見ると、唇が少し腫れてるような気がしてしまった。



紘子さんの部屋のドアを小さくノックしてみたけど、
返事はなかった。

私は自分の部屋に入って、
溜息をついた。


ジャンボさん、妻帯者だったのね。
それはショックだったと思う。

ジャンボさんに会ってから、
合コンもすごく減らしてして、
嬉しそうにデートに行っていた。

どうして、結婚してるのに、
紘子さんと付き合ってたのかな。

哀しくなってしまって、
私は泣いてしまっていた。



暫くして、紘子さんの部屋のドアが開いて、
私のドアをノックする音がした。


「はい」と返事をすると、
カチャっとドアが開く。


「ちょっと…、瑞樹さん、どうしたの?」と言われてしまう。

「亮平さんてヒトに、
なんかされたの?」と言われて、
私は紅くなりながらも、首を横に振った。


「違うの。
紘子さんのこと、考えたら…」と言うと、
紘子さんは笑って言った。


「良いのよ。
考えてみたら、医者でもないヒトとは結婚出来ないんだし、
気持ち良くして貰ったと思えば…」

そう言いながらも、
肩を震わせて涙を堪えている。


「瑞樹さんはこんなことにならないようにね?
亮平さん、大丈夫?」と、
私を心配までしてくれる。


「調停離婚したって言ってた。
お子様も居るみたい」

「おじさまとおばさま、
絶対に許してくださらないんじゃない?
大丈夫なの?」

「そうかもね。
でも…なんだかとても惹かれてしまって…」

「泊まったってことは…、
セックスしたの?」

「それはまだ…。
怖くて…。
そんなに怖いならって途中で辞めてくれて…」

「その辺はオトナだね?
若いとそのまま、されちゃうからね」と紘子さんは笑って私の髪を撫でた。


「はぁ。
また、新しいオトコ、探さなきゃ。
やっぱり、医大生かお医者さんとの合コンかな?」と言った。
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